現在の車はAT(オートマチックトランスミッション)車がほとんどで、実際の修理工場でもクラッチ交換作業はほとんど無くなりました。
若い世代の整備士でクラッチ交換の経験が一度もない方もいるようです。
この記事では基本的な、クラッチの交換手順と構造について説明します。
クラッチの点検方法
クラッチの故障で最も多いのが“クラッチの滑り”と”クラッチが切れない”という症状です。
今回紹介する車両は両方の症状が出ていました。
車両を点検すると、トップギヤを入れてクラッチを繋いでもエンストしませんでした。完全に滑りの症状が出ています。ギヤの入りも悪くクラッチが完全に切れていないようです。
クラッチディスクの摩耗状態は外からは見えないですが、レリーズシリンダーの状態などである程度判断できます。
レリーズシリンダーの状態を見るとプッシュロッドがシリンダーの中に入り、ブーツが縮んでいました。
クラッチ交換後のプッシュロッドはこのくらい突き出ています。
クラッチの交換
クラッチの交換は通常
- クラッチカバー
- クラッチディスク
- レリーズベアリング(スラストベアリング)
- パイロットベアリング(車種によっては付いていない)
の4点セットで交換します。
交換部品
新品のクラッチカバーとクラッチディスク
年式が古くサビていたので、レリーズフォークとピボットも交換します。
トランスミッションの取り外し
クラッチを交換するにはトランスミッションを取り外す必要があります。
トランスミッション取り外し手順
- バッテリーマイナス端子を外す(スターターを外すため)
- トランスミッションオイルを抜く
- フロントマフラーを外す
- プロペラシャフトを外す
- メーターケーブルを外す
- シフトリンクを外す
- バックランプスイッチのカプラを外す
- レリーズシリンダーを外す
- ミッションジャッキをかけてミッションを支える
- ミッションマウントを外す
- スターターを外す
- エンジンとミッションを繋いでいるボルトを外す
- トランスミッションを外す
まずバッテリーのマイナス端子を外しておきます。
ミッショントランスミッション周辺の部品を外す前にオイルを抜いておきます。
フロントマフラーを外します。(車種によっては外す必要ないこともあります。)
プロペラシャフトを外します。
(取り付けの時、元の位置になるように合わせマークを付けておきます。)
(オイルを抜いておかないと、この時漏れてきます。)
エンジンとミッションを繋ぐブラケットを外します。
レリーズシリンダー、シフトリンク、メーターケーブル、バックランプスイッチのカプラを外します。
スターターを外します。(落ちない状態であれば配線を外す必要はありません。)
エンジンとトランスミッションを繋いでいるボルトをすべて外し、切り離します。
クラッチカバーとディスクの交換
ミッションが下りたらボルトを外し、クラッチカバーとクラッチディスクを外します。
外したカバーとディスクです。(ディスクは摩耗してかなり薄くなっていました。)
特殊工具を使用して、パイロットベアリングを引き抜きます。
ソケットなどを使用して、パイロットベアリングを打ち込みます。
クラッチカバーとディスクを取り付けます。
クラッチディスクのセンター出しをします。(カバーのボルトは締め付けず、仮止めにしておきます)
センター出しの工具はカバーとパイロットベアリングの穴にちょうどいい物を選びます。
トランスミッションの取り付け
新品部品を全て取り付け終わったら、センター出しの工具を抜き取りトランスミッションを載せます。
トランスミッションのインプットシャフトと、クラッチディスクの穴を合わせて取り付けます。
試運転、最終チェック
全て取り付け終わったらバッテリーマイナス端子を取り付け、クラッチペダルの遊びを点検します。問題なければ実際に走行し、クラッチが正常に作動してギヤがスムーズに入るか確認します。
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