今回はエンジンチェックランプが点灯したタウンエースバン(S420M)の整備事例を紹介します。
この車両はタウンエースバンで、ダイハツのOEM製です。
診断機を用いてダイアグコードをチェックしたところ、「P0420 触媒劣化」というコードが表示されました。このコードはおおよそ2008年頃から用いられているものです。
車両の走行距離は110,000kmで、オイル管理が十分でない状態でした。
触媒は排気ガスを浄化する装置で、その劣化は触媒の前後に配置されたO2センサーを通じて判断されます。
具体的には、フロントセンサーの出力に対してリアセンサーがどのように反応しているかをECUが分析することで劣化が判断されます。
まず、排気ガスが実際に汚れているかどうかをCO・HCメーターで測定しました。
COが0.11%、HCが10ppmで測定され、これは正常な範囲内であると考えられます。
また、エンジンオイルの量も正常であったため、エンジン本体に問題はないと判断しました。
この事例では、触媒劣化の警告にもかかわらず、排気ガスの数値が正常であることから、エンジン本体の問題ではないという結論に至りました。
O2センサーの点検
O2センサーの点検、診断手順を以下に紹介します。
O2センサーの出力電圧の点検
3000回転時の波形です。診断機を使用してO2センサーの出力電圧を点検します。
この波形は、フロントO2センサーとリアO2センサーの反応を示しています。
波形の解析
フロントO2センサーの出力は0~1Vの範囲で波打ち、リアO2センサーは細かい波形を示しています。
通常、フロントセンサーが示す反応に対して、リヤセンサーが遅れて反応するのは正常な動きと言えます。
異常の兆候
もし、フロントとリヤのセンサーの出力タイミングが同期しているようであれば、それは排気ガスが適切に浄化されていない可能性を示唆しています。
今回のケースでは、リヤO2センサーがフロントO2センサーに比べて遅れてはいますが、その波形がやや大きく感じられる点には注意が必要かもしれません。
高速走行時の点検
この特定のコードの検出は、高速走行(恐らく70km/h以上)の状況でしか確認できないため、その環境下での点検が必要です。また、正常な車のO2センサーの出力も診断機で参照することをおすすめします。
交換の提案
走行距離やオイルの管理状況を考慮に入れると、触媒とフロント、リヤのO2センサーを同時に交換するのが最も確実な方法と思われます。
O2センサー、触媒の交換
部品交換の了解が得られたので作業しました。
新品の触媒です。
新品のO2センサーとマフラーガスケットです。
専用工具を使ってO2センサーを緩めます。
リヤのO2センサーはカプラーのみ外します。
マフラーを緩めます。
外したマフラーと新品のマフラーです。
取り付け完了。
正常なO2センサー波形
交換後のO2センサーの出力を点検したいと思います。
故障コードの確認
ダイハツのOEMなので車種はダイハツを選んで点検します。
前回の診断から2~3週間経過しましたが、新たな故障コードは検出されませんでした。これは、その間に高速走行を行っていないためかもしれません。
交換後のO2センサーの波形の解析
3000回転時のリアO2センサーの出力はほぼまっすぐで、正常な反応を示しています。
交換前のリアO2センサーの出力には若干の波がありましたが、交換後は改善されています。
アクセルを離した際、フロントO2センサーに少し遅れて反応しており、これも正常な動きです。
排気ガスの点検
交換後の排気ガスの測定では、COは0.10%、HCは0.00ppmと、わずかに改善されましたが、大きな変化はありませんでした。
これにより、故障と呼べるほどの問題はないように感じられます。
作業のまとめ
この記事では、タウンエースバン(S420M)で発生した「P0420 触媒劣化」のエラーコードに対応するため、O2センサーと触媒の交換作業を詳細に解説しました。
診断機を用いたO2センサーの波形分析から始まり、部品の選定、交換手順、そして交換後の再点検に至るまで、一連のプロセスを追いました。
交換作業後の点検では、リアO2センサーの出力が正常になり、排気ガスの数値もわずかながら改善されました。これにより、交換が適切であったことが確認できました。
しかし、交換前後の排気ガスの数値に大きな変化がなかったことから、触媒劣化の判定基準については、やや厳しいと感じる点もありました。
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